AIが雇用に与える衝撃は、まだ始まったばかりだ

大量解雇より「仕事の再設計」が先に来る

米国の決済・フィンテック企業Blockが「AIが業務を代替した」としてエンジニアを中心に数千人規模のレイオフを実施したことは、記憶に新しい。同様の動きは他の企業にも広がっており、AI導入を理由とした人員削減が注目を集めている。しかしGartnerは、AIによる生産性向上を理由とした大規模な人員削減の傾向は見られないと指摘する。2025年に追跡した140万件のレイオフのうち、AIの生産性向上に起因するものは1%未満だったという。

GartnerのAI戦略チームのアナリスト、Nate Suda氏はこう言う。「AIは仕事を削減しているというより、仕事を変えている意味合いが強い。近い将来起きるのは大量解雇ではない。仕事の再設計、採用の抑制、役割の統合だ」。

最もリスクにさらされているのは、ワークフロー中心の職種だ。サービスデスク、ビジネスアナリスト、プロジェクトマネージャーなどが該当する。「チケット、ドキュメント、ステータステンプレートといった成果物を生み出す定型業務は、自動化が進むだろう。人員は圧縮され、人間の役割はナレッジの整理、例外処理、ワークフロー設計、そして特に部門横断的な業務へとシフトする」とSuda氏は言う。

採用抑制と役割統合が静かに進む

約1000人の米国ビジネスリーダーを対象にしたResume.orgの調査でも、採用抑制の傾向が確認されている。AIを理由にエントリーレベルの採用を停止した企業はすでに21%に上り、2027年までに半数が停止すると回答。2026年末までにエントリーレベルのポジションが廃止されると予想する企業も3社に1社に達した。

AIと直接関係のないレイオフも存在する。Oracleが数千人規模のレイオフを計画しているとされるが、これはAI関連データセンターへの投資のためだ。大手テック企業は「既存事業の縮小と、AIが生む新市場への転換」を進めているとSuda氏は言う。

ただし大手テック以外の企業には注意を促す。「大手テックの動きは、他業界の企業が参考にすべきシグナルではない。AI関連のハードウェアやソフトウェア、サービスを扱っていない企業——たとえば運送会社——が同じことをしても意味がない」とSuda氏。

AIは仕事を奪うのではなく、変える

多くのITプロフェッショナル、特にシニア層は、AIが単純作業を引き受けることで仕事の範囲が広がり、より部門横断的な役割を担うようになるとSuda氏は予測する。例えば、シニアソフトウェアエンジニアなら、ビジネスアナリストやプロダクトマネージャーの領域にまで仕事を広げられるようになる。

「これまで時間を理由にできなかったことでも、できるようになる。コアコンピテンシーが高いからこそ、AIを使ってその能力を他の領域に広げられる。これが『役割の統合』の本質だ」とSuda氏は言う。

一方、若手ITワーカーに対しては、AIを積極的に活用して、これまでより速くスキルを伸ばすことを勧める。
Gartnerは今後起こりうるAI時代の働き方として、以下の4つのシナリオを想定している。

①少人数の人間がAIを補完しながら働く
②多くの人間がAIを使ってより質の高い仕事をする
③革新的な働き手がAIと協働して知の最前線を切り開く
④ほぼAIだけで組織が機能する

一つの組織の中でも、事業部門によって当てはまるシナリオは異なる。すべてのシナリオが同時に存在することも珍しくないとSuda氏は言う。

CIOへのメッセージとして、次のように伝える。「AI戦略の成否は、人事部門との連携にかかっている」。さらに、AIがITの職種ごとに与える影響は大きく異なるため、サービスデスク、コーディング、プロジェクトマネジメントをそれぞれ別々に考えた人員計画が必要だと強調する。

ITリーダーたちの見方

Gartnerの予測に共感するITリーダーは多い。

HRプラットフォームプロバイダーClick BoardingのCTO、Adam Wachtel氏は、ジュニアエンジニア、エントリーレベルのQAテスター、ネットワーク管理者など若手IT職種が近い将来AIの影響を受けると見る。

「これらの仕事がなくなるとは思わないが、統合は進む。エージェンティックAIのフレームワークを活用して定型業務を自動化し、ナレッジ移転を促進し、時間外サポートを補助することで、少ない人数でより多くをこなせるようになる。ただし当面は、人間の介入と監視は依然として必要だ」とWachtel氏は言う。

データプラットフォームDomoのチーフデザインオフィサー兼フューチャリスト、Chris Willis氏はこう言う。「大きな組織は、人々を自分のレーンに留めるように設計されている。AIはそのレーンを気にしない」。

Willis氏は、AIがデータ準備、ダッシュボードのメンテナンス、チケット対応といった定型業務を引き受けることで、ITはより高付加価値な戦略的責任——AIシステムのガバナンス、ビジネスロジックの定義、データ品質の確保、モデルリスクの管理——へとシフトすると予測する。

「AIはITを置き換えるのではなく、ITの摩擦を取り除く。役割のシフトが起きている」とWillis氏。CIOはチームのAIリテラシーに投資し、乱立するAIツールを統合・ガバナンスされたプラットフォームに集約し、重要なプロセスにおける人間の関与の範囲を明確に定めるべきだと助言する。

「大きな技術的変革に対する正しい対応は、『人員削減』ではなく『ケイパビリティの再設計』だ。当面は、システムを構築し、ガバナンスし、導く人材がむしろ増えて必要になるだろう」とWillis氏は述べた。