AIヘルプデスクプロバイダーAteraが実施した調査によれば、ヘルプデスクの遅延をはじめとするITの非効率によって、多くの企業が年間数百万ドルの損失を被っている。社員やITリーダーの多くが、こうした問題によって毎週数時間を失っているという。
調査では、社員の3分の2以上が業務時間の少なくとも10%を、プロセスのナビゲート、問題の再登録、技術的トラブルの解決といった「メタワーク(本来の仕事ではない間接作業)」に費やしていることが判明した。また約3分の2の社員が、システムの停止によって1日に少なくとも10分を失っており、多くの場合その損失は社員1人あたり週100ドル以上にのぼる。規模が大きくなるほど、損失は急速に拡大する。
ITリーダーも例外ではない。約4分の3が、アクセス障害、システムの遅延、承認の遅れ、ITの対応遅延などにより、週平均1時間以上を失っていると回答した。AteraのCEO兼共同創業者のGil Pekelman氏によれば、ヘルプデスクへの問い合わせ後、社員が業務に戻れるまでには平均3.5時間かかるという。チケットを開いてから担当者が対応するまでの時間、解決にかかる時間、そして別の作業に切り替えてから元の業務に戻るまでの「スイッチングコスト」が重なるためだ。
見えないコスト——財務部門が気づいていない損失
IT専門家は「この数字は控えめかもしれない」と指摘する。アプリセキュリティプロバイダーBlack Duck SoftwareのシニアディレクターCollin Hogue-Spears氏は、多くの大企業がITの摩擦による生産性損失として200人以上分に相当するコストを抱えているが、単一の予算書には現れないと言う。
「この調査の数字は、私がエンタープライズ環境で目にするものと一致している。問題は摩擦が存在することではなく、財務チームがそれを直視する機会すら与えられていないことだ」とHogue-Spears氏は言う。「CFOが四半期ごとに人員数を見直しながら、ITの摩擦コストを一度も確認したことがないとすれば、実態のない損失に資金を垂れ流しているだけだ。ITの摩擦は単なるコストではない。帳簿に載らない隠れた人件費だ」。
Hogue-Spears氏は、デジタル体験の測定ツールを導入し、四半期ごとにレビューを実施することを推奨する。「ITの摩擦はある程度避けられない。コンプライアンス要件やマルチクラウド環境がそれをさらに複雑にする。「優れたCIOは摩擦を最小化する。なくすことはできないが、減らすことはできる。デジタル体験が優れた組織はそうでない組織より生産性の損失が明らかに少ない。そのギャップこそ、リーダーシップの差だ」。
「ゼロ摩擦のIT」という幻想
コンサルティング会社contracoのCEO、Frank Meltke氏は「摩擦がまったくないITは幻想だ」と言う。強固なセキュリティプロトコルやコンプライアンス要件は、ある程度のメタワークを生む。「ITリーダーの目標はすべての摩擦をなくすことではない。存在するプロセスが組織を守るために機能していることを確認することだ」。
問題は中小企業(SMB)で特に深刻だとMeltke氏は指摘する。今回の調査は1000人以上の企業を対象としているが、小規模な組織では、さらに大きな問題が見えるかもしれない。「大企業の社員がヘルプデスクのチケットで45分待つとすれば、SMBの社員はそれと同じかそれ以上の時間を自力で問題を解決しようとして失う」。
中小企業には、多数の安価な単機能アプリを組み合わせるのではなく、少数の高機能で信頼性の高いツールに絞ることを勧める。
AIは救世主になれるか
AIを活用したヘルプデスクサービスが、対応速度を高め、社員を早期に業務に戻す助けになるという声もある。Meltke氏によれば、AIはガバナンス関連の摩擦には対応できないが、ヘルプデスクの一部機能は自動化できる。
「自動化されたヘルプデスクツールは、パスワードリセット、アクセス申請、既知のエラーパターンなどの定型的な一次対応を人間のキューより速く処理する。大量のルーティンチケットを処理する組織にとっては、実際に測定可能な効果がある」。
AteraのPekelman氏も、AIを活用したヘルプデスクサービスが対応時間を数時間から数分に短縮できると言う。また、優秀なIT人材の不足という課題にも対処できるという。「市場で優秀なIT人材は非常に少ない。しかしAIを活用することで、会社にとって非常に重要なプロジェクトに集中できるようになる」。